あなたは消え行くスプートニク  伽藍の輝き銀河系


 あなたは消え行くスプートニク  伽藍の輝き銀河系
 その中心から落ちてゆく     宇宙の果てへと落ちてゆく
 世界樹の根を引き抜いて     逆立ちアトラスサボタージュ
 命令どおりにいたします     だから地球を割らせてください
 そいつはくす球中からは     新たなゼウスが生まれるらしい


 新たなゼウス ギリシア神話のそれとは違い黒人の女でそれも盲目である。
 両手足に鎖がかけられているがそれは自由の証であり、
 一つ一つに白人たちの王国の王を打って殺した血がこびりついている
 彼女はあなたの孫娘に良く似ている
 瞳が開いたら、きっとそっくりそのままだ
 どれほどの苦難が我々に与えられただろう
 七千機の宇宙船を太陽星系外へ飛ばしたにも関わらず、
 なぜか地球型惑星は一つも見つからなかったから
 戦争は終わった代わりに虚争と呼ばれる消しあいが始まって
 血の一滴も骨の一つも残さず人は絞られ栄養分となって大地の肥沃度を増すために使われたり
 そこにはだしの少女たちが種を撒いたり
 くす球のように割れた地球から出てきた黒人女のゼウスは
 自由になって一体何をしようかと迷う
 今なら全てが与えられる 望んでいた全てのものが
 そうして彼女は、古いゼウスが何をしていたのかも知らないというのに
 あのオリュンポスの王と同じような神生を送った
 つまり、数え切れないほどの男と寝て寝て寝まくった
 奪って奪って奪いまくった
 

 どうか苦難を どうか冒険を お与えください どうか物語を どうか伝説を 
 その正義とやらに、どれほど快楽が仕込まれているか?



 ムネモシュネたち頼みます  どうか笛を吹いてくれ
 その透き通った右の肺に   いくつか穴をあけるから
 奴隷海岸を吹く風を     うまく通して笛にして
 私に吹いてよ子守唄     肺は一つで大丈夫
 黒人女のゼウスさま     明日はどこまで飛んでゆく
 銀河の卵をいくつも産んで  さらば伝説どこへゆく


 戦場を与えて欲しいのなら他民族との戦争なんかを望んでいたらだめだ
 憲法を改正して隣国へ攻め込むなんて真似で満足できるはずがない
 それよりは他の惑星を見つけるほうがずっとよい
 そこには極悪で人類愛という言葉とはかけ離れた恐ろしい民族が住んでいる
 文化などというものは到底持ち合わせていない恐ろしい種族だ
 機械文明も持たないくせにそいつらは何か特殊な能力を持ちいる
 人権思想家を環境保護のための移民という名目で黙らせて
 やつらを殺して、あるいは捉えて奴隷にすればよい
 血気にはやる人々は愛地球心を掲げ
 電子レーザーソードと反重力シールドを手にいくさに出かける
 血しぶきが目に入らないように気をつけて
 雄たけびを残酷などと言うのはやめてくれ
 この星にまで神の威光が届くだろうか?
 OT図を描いていたやつらに?
 もしかしたらこの星こそが楽園なのかもしれないじゃないか
 だとしたら箱舟はきっと宇宙船だったんだね
 電子レーザーガンは殺すてごたえがないから人気が低い
 相手の心臓がゆっくりと機能を停止して温度を失っていくのを手のひらで確かめるのが嬉しい
 これは殺人ではなく狩りである
 積み上げられた一万年の文明は狩猟の血によってらくらく瓦解した
 

 植民者たちは――ふと空を見上げる。
 そのときに月が青く光が彼らを照らす。
 すると、彼女らはこう思い込む。
 そうだ、あの地球がどうとか、宇宙船がどうとか、その方が夢だったのだ。
 宇宙などというのは夢の中の出来事である。
 この大地が丸いなどというはずがない。
 大地はどこまでも続き――世界の果てからは海から水がこぼれ出している
 ここが私たちの生まれた土地だよ
 電子レーザーソードと反重力シールドは
 ――今では魔剣ハルペーと聖盾アイギスと呼ばれるようになる
 彼女らは女神ゼウスに祈る
 黒い肌をした盲目の女神
 遠い過去かあるいは未来
 遠い未来かあるいは過去