東京レインボー・プライド2014

・先週末、レインボー・プライドのイベントに参加してました。

http://www.tokyorainbowpride.com/web/

●ブース
・代々木公園のブースでは、様々なブースがあった。同性結婚のウェディングプランナー(ブースには袈裟を着たお坊さんの姿があった)、LGBTをモチーフにしたイラスト、アート作品の展示、書籍販売、協賛なのかライフガードの車が止まり、缶を無料で配っている。企業ではIBMマイクロソフトのものもあったが、パンフレットが置いてなかったり、何をしているのかよく分からないままだった。

・駐日外国大使館のブースがいくつも。イギリス、アメリカ、イスラエル、北欧、目立ってたのはスピーカーを設置していて、目に鮮やかなオレンジのオランダ。アメリカブースでは虹色のキスマークにメッセージを寄せる、というキャンペーンを行っている。他のブースでも短冊に願いを、というもの、写真にメッセージを書いて撮影するもの、があったよう。

・服装は本当に様々で、カラフルな服を着ている人がやや多いように感じたけれどカジュアルな人が大半。ドラァグクイーンドラァグキング、とひとくくりにしてしまっていいのか分からないのだけど、羽や華美な装飾のついたドレス、レインボー・カラーや露出の多い人はとても目立つ。

●パレード(文中の「フロート」というのは山車=装飾された車、そしてそれに先導されるグループのこと)
・パレードには安部昭恵(安部首相夫人)が参加しており、僕自身の少し前のフロートに乗っていたのだけど、特に紹介も無く、後にネットでそれを知る。午前中のステージで発言したのだろうか?

・パレード途中、協賛のGAPの店の前では店員がプラカードを掲げてこちらに手を振る。

・これまで自分が参加したデモと比べると、警官の数がとても少ない。信号の関係でパレードは急がされ、フロートごとの分断はかなり大きく、数分の間次のフロートがこない、という状況もあった。列はボランティア・スタッフが誘導していたけれど、車がすぐ近くを走っており、路上駐車している車の脇を通るときは狭くてちょっと怖い。こうあんけーさつさんたちじゃないかなー、と思う中年男性十名ほどが輪を作ってノートを書いているところを見る。

・子供連れの参加者は沢山見た。少なくとも10組、もっと多かったかもしれない。

・路上にもプラカードやレインボーフラッグを持った人はいつも見えていて気分は盛り上がる。歩道橋の上に沢山のフラッグが見えたときはパレード列全体が大きな歓声をあげた。そんなわけで前の方で早々にパレードが終わった僕は引き返して歩道橋の上で旗を振っていた。

・デモとパレードで、一参加者として最も大きく感じるのは「シュプレヒコールの有無」どう思うかというより、声を張り上げなくていいので喉に優しい。プラカードは様々で、僕がいた列は「エイズはまだ終わっていない」というカードが出発前に配られた。スタッフがごくたまにメガホンで「エイズはまだ終わっていない!リビング・トゥギャザー!」と言っていたけれど、声も優しく、路上にいる人々に向けて主張しているというよりはその場所に言葉をぽん、と置いているような印象だった。他のフローとでは、「私は性的少数者です、あなたのそばにもいます」といったメッセージのプラカードを何枚か、またNO H8! というフロートだと思うけれど、そこには「すべてのヘイトにNO!」と明確な主張のプラカードが目立っていた。

●ステージ(午後のみ参加)
・大使館のスピーチが多数。イギリス大使館はハッピを着て和太鼓のパフォーマンスから始める。なんとなくオリエンタリズム……と斜めに見そうになったけど上手かった。ボリュームちっちゃかった気がするが。イギリス、ニュージーランドで去年同姓婚が合法化されたことを知る。オランダ大使館が「世界で始めて同性婚を合法化しました」というところで大きな拍手。イスラエル大使館は内容というより「これはイスラエル大使館のゆるキャラ、シャロームちゃんです!」に全てを持っていかれた。ドイツでは自身ゲイであることを公開しているベルリン市長のメッセージ。

・バンド演奏を挟んで、政治家のスピーチ。まずは福島みずほが登壇して、石原慎太郎のマイノリティ差別発言を非難、同性愛者の自殺者相談、パートナシップ法、同姓婚の合法化や、議員会館での勉強会に触れ、最後にナチスドイツの同性愛者差別を引き、戦争と差別の結びつきから安部政権を批判して終わる。安部首相夫人の参加を思い出すところ。話の内容をこんなに覚えてるのは、スピーチのリズムと勢いが本当に上手くて会場の空気を引っ張ってたから。

乙武さんが登壇。自身のGIDの友人について「元の身体」というのをテーマに語る。トイレに連れて行ってもらうときの混乱についても話していたけれど、ユーモアのある話で会場と一緒に笑いながらも、以前のジェンダー論の授業で「トイレと更衣室」というのは様々なセクシャリティが身体の性、しかも男女の二分に還元されてしまう場所・装置、と聞いたことを思い出す。

・その後、世田谷区、豊島区、中野区の議員が登壇して、自身がセクシャルマイノリティであることや、区の中での提言、試みなどを述べていく。世田谷区は複数人で部署があって色々な活動、中野区は駅ガードで写真展があったり、区長の支持が得られたり、といった話。

・その後、いくつかのダンス。レイチェルさんというパフォーマーのステージがとてもインパクトがある。ステージでの衣装の早代わり。着物で歌舞伎や日舞っぽい動きを入れながらダンスミュージックで踊るのが楽しい。ステージの最前列に子供連れのお客さんが座っていて、パフォーマンスの合間にインタビューされてドギマギしていた。

・ラストのステージは夏木マリLGBTへの連帯を「愛」という一語に集約して普遍化してメッセージにしているように感じた。などと言ってるのは跡付けで僕は最前列でぶんぶん頭を振ってちょっと泣いていた。「蜷川さんにちょっと褒められてその気になった」という歌詞にクスリ。昨日のクラブイベントでもそうだったけど、LGBTにとって特別な意味を持つ楽曲、というのがある。RENTの歌だったり、「let it go」だったりするのだけど、最後に歌われた「over the rainbow」もそうで、LGBTのシンボル、多様性を示すレインボー、またその主題歌の映画『オズの魔法使い』の女優と、プライドパレードの最初の原因でもあるストーンウォールの反乱……と深くつながる曲であることを後からwikiで読んで色々と背景・文脈を知ると違うものが見えてくる。曲が始まった瞬間の歓声の中にも様々な思いがこめられていたのだろう。

●フィナーレ
・ボランティアスタッフが登壇、代表から挨拶があり、韓国でのクィア・パレードとの紹介と連帯表明、20年前に最初のゲイ・レズビアンパレードを行った方のスピーチでは大歓声が起こった。来年はフェスティバルも二日間になりさらに規模が拡大するそう。パレード参加者は2千数百名くらい、と発表されていた。

●後記
・僕自身は、LGBTのイベントに参加するのは初めてで、きっかけは同じ学科の人権団体でインターンしている友人に誘われたから、ということ。ただし、大学でジェンダー論勉強会を主催したり、図書館にジェンダー関連の書籍を入れる選定を手伝ったり、ということをしていた。ジェンダー論への興味は児童文学の中に描かれる男女イメージがときにステレオタイプを作るのに無自覚に見えるところ。それら全てをジェンダーフリーにすればいい、ということには反対する思いがあるけれど、これから文章を書いていくなかで自覚的でありたいとは良く考える。

・もう一つの参加理由は、随分前のことになるけれど、僕自身がアジテーションシュプレヒコールにあふれたデモに違和感を感じて、音楽を使ったパレードの主催側として参加したこと、そして世界のLGBTのパレードの写真は、きらびやかで、参加者が最も楽しそうにしているように見えて、機会があれば行ってみようと感じていたことが背景。

・ステージ上で議員さんの一人が、パレードを「デモ」と言い間違えて笑いが飛び、客席から「いや、デモだよ!」と答える一幕があった。デモとパレードの違いは客観的に比較的明確なものも(例えば上に書いたシュプレヒコールの有無)、人の解釈によってまちまちなものもあると思う。LGBTとその不平等改正の支援者たちの内側に向けられたものと、沿道にいる人々やメディアを通して全国に向けたメッセージ。LGBTについて知ってもらい、様々な差別、不平等な立場の改正を望む、という意図があるとしたら、それはデモに近づく(デモの定義を「非参加者に何かしらの要求・働きかけをするもの」とするなら)

・参加者の意志や主張ひいては返答や行動の責任ということまで考える。僕はなにげなくパレードの申し込みに行ったところ、HIVに関するフロートに参加し、「エイズはまだ終わっていない」というプラカードを持って歩いた。HIVLGBTの関連は、映画やミュージカルでで見たRENT、以前大学の授業で聞いたイブ・セジウィックのエピソードくらいしか知らない。アメリカで以前、HIVと同性愛者が一まとめにされて差別されていたこと、けれどそれは知識でしかない。パレードに参加したことで、僕自身がそのフロートの団体 living together にアクセスするきっかけにはなったけれど、沿道から、もちろんツイッターからでも「あなたはそれを支持しているんですね?どうお考えですか?」と聞かれたのなら、それは知識ではなくて主張を聞かれている。「まだ良く知らないんです」と出てくる答えはこう。「デモ」の参加者の態度としてはこれは問題に思えるけれど、パレードならそうとも言えないだろうか。tokyo rainbow pride のウェブサイト、代表挨拶には以下のように書かれている

【マジョリティに向かって「私たちはここにいる」と声を上げ、マジョリティの中に分け入って「共に生きよう」と手を携える。LGBTフレンドリーな支援者たちと共に行進し、多様性を共に祝福することが、その第一歩だと思っています。】

 「多様性を共に祝福する」という言葉にうなずくけれど、そこで止まらず知識も、意見も、主張もより積み重ねて行きたいとも思う。

・具体的な話では、パレードは音楽がガンガンにかかって楽しいし、シュプレヒコールが無くて気楽なのはそうなんだけど、もっと色々楽しめないかなぁ、なんてことも考えてしまう。クラブみたいにときおり止まっては交差点でみんなで踊ったり(昔知人がそういうパフォーマンスをしたそう)移動型のテーブルを引きずって何か飲みながらリラックス、パレード内を駆け抜ける聖火ランナーだったりパフォーマーで重層的にしたり、ラップやポエトリー・リーディングをしたり、演劇も音楽も、インスタレーション・アートなどもっとアートを持ち込んでもいいし「公的・日常的でオープンな空間である路上に祝祭を持ち込む」ことを楽しみたい。